雨が、降る。 机の上に書類を置き去りにして窓の外を眺める。空に厚く雲が広がっていて、しばらくは 止みそうにない。 こんな憂鬱な天気の日は、なかなか仕事をする気にならない。 (今日は中尉もいないし。) さらに気が抜けると言うものだ。 太陽が恋しい・・・ ふと、あの子のことを思い出した。あの、日の光を集めたような子供を。 あの子が傍にいてくれれば、雨など気にならなくなるのに。あの子の笑顔は雨の日のこの鬱々とした気分を 晴らしてくれる。 何時だったか、自分がいない時の私の状態を聞いたらしいあの子に、一度言われたことがあった。 『あんたの情けない顔が見てみたい』と。 いつもの笑顔と共に『君がいる限りは無理かな。』と答えを返したら、意味を酌めなかったのか首を傾げて いた。 その後、すっきりしないといった風情の彼に、私が本当の笑顔を向けるのは君だけだと伝えたら、渋々ながら 曖昧な返答に関して流してくれた様だ。 (真っ直ぐに気持ちを伝えていたら) あの子はどんな反応をしただろう。呆れるだろうか。何をばかなことを、と怒鳴られるだろうか。 そういえば、しばらくあの子の声すら聞いていない。最後に報告に来てからどれほど経っただろう。 怒鳴り声でもいいから聞きたいと言ったら、 (本気で呆れられそうだな) そこまで考えて、苦笑した。いい年をした大人が、なんとも青臭いことを考えているものだ。 相当、あの子に頭を占領されているらしい。いや、させているのか。 机の上の電話が鳴った。 また上からの激励だろうか。溜息を吐きつつ受話器を上げ、耳に当てると、沈んだ気分が霧散した。 交換手が回線を繋げるための、数秒すら待ち遠しい。 この後は、真面目に仕事をしてやろう。そしてつれない子供を呼び戻す。今回は時間が空いたから口実は 報告書の提出でいいだろう。渋るだろうが、それもまた一興だ。渋った分だけ長くあの子の声が聞ける。 雑音が消えた。回線が繋がったらしい。 受話器の向こうから待ち望んだ声が聞こえる。元気そうだ。 軽く息をつき、今までの思考が聡い子供に気取られぬよう意識して、 「やあ、鋼の。」 あとがき また、短いですね。すいません・・・ 「あめつぶ」のロイさんサイドです。 違う場所で互いのことを考えているという、なんともありきたりなネタですが、こんな感じの二人が このみなんです。